発達障害かも知れないお子さんをお持ちのお父さんお母さんへ

お子様の子育てでお悩みですかそれとも、子育ての方針で意見が合わず、困っていらっしゃいませんか? ひょっとして、「うちの子は発達障害かもしれない」と?
「その程度なら他の子どもと同じだよ」とか、「それで障害者ならみんな障害者になっちゃうよ」とか、仰いませんか? わが子の障害を心配し自身の子育てに不安を感じていても、「うちの子は心配はないし、子育ても間違っていない」と思いたいのです。でもこの対応は、なんの問題の解決にもならず、苦悩を深めるだけです。
必要なことは、実際に直面している困難を直視することで、子育てで言えば、子どもをもっと「よく見る」ことです。 子どもを「よく見る」ことをせずに、頭で考えただけで判断しようとしていませんか?
大切なことは、「障害児」であるか「健常児」であるかではなく、現に「育てにくさで困っている」という事実をしっかりと受け 入れることであり、それができないと、なかなか有効な対応が始められません。

親が困っている時は、子どもも困っている

発達障害の特徴については、誰にでも得意な分野と不得意な分野があるように、成長も分野によってバラつきがあり、そのバラつきが大きいのが発達障害の特徴の一つです。
例えば、計算をすることが得意なのに、文字を書くのが苦手だったり、やりたくない事は頑としてやらないくせに、好きなことには誰よりも真剣に取り組んだり。
また、発達障害の子が苦手とする分野の一つに、「他人の気持ちを推し量る」というものもあります。小さいうちは誰でもそうですが、子どもの遠慮のないストレートな物言いに苦笑してしまった経験をお持ちの方は多いはずです。
ただ、小さいうちは許されても、ある程度大きくなってくると、トラブルの原因になることも少なくありません。 一般論としては、生きていくためには苦手なことから逃げてばかりではいけません。でももし、障害が原因で苦手な分野での成長に時間がかかっているのだとしたら、その分野での成長をともめることは、本人にとっては苦痛なことかもしれません。 発達障害は脳の中枢神経の一部に何らかの原因があり発生するものであると考えられており、子育ての問題により発生する愛着障害とは異なるものです。
苦手の原因が発達障害の場合は、丁寧に説明してもすぐには改善しませんし、ましてや本人の「やる気」などが問題なわけではありませんので、叱ったところで全く効果は期待できません。
あなたが子育てで困っている時は、お子様も同じように困っているのです。

対応の基本

①ハードルを下げる
苦手分野を克服するために、「もう○歳なのだからわかるだろう」という先入観を排し、出来るところまでハードルを下げ、何につまずいているかをお互いに認識します。 発達障がいの子の精神年齢は、実年齢の3分の2くらいとされています。
「約束したのだから守りなさい」などと突き放すのではなく、何のために守らなければならないのか、なぜ守れなかったのか、どうすれば守れそうか、一緒に考えてみてください。
つまずいた箇所が解ったところで直ぐに解決するとは限りませんが、それすら解らずに叱りつづけても何の効果もありませんし、叱られる方はたまったものではありません。

②得意分野を伸ばす
これも発達障害の特徴の一つですが、苦手分野がある一方で、必ずと言っていいほど得意分野があります。 「好きな分野」と言い換えてもいいかも知れません。得意な分野であっても、成長するに従い壁にぶち当たることはあります。それでも好きであるがゆえに上手く乗り越えていくことができれば、困難を乗り越える成功体験さえも積むこともできます。お子さんが小さいうちは、あそびの中でそれを見つけてあげてください。 ひたすら跳ね回ることや転げまわることは大好き、というお子さんは沢山います。

③自己肯定感を満足させ続ける
そして一番大切なのが、他人に自分の存在を認めてもらうこと。つまり自己肯定感を満足させ続けることです。 成果や努力を認め、褒められることで得られるものであり、逆に叱られてばかりいると失われていってしまいます。
時には叱ることも必要ですが、感情的になったり人格を否定するような叱り方をしてはいけません。 普通の子育てと同じじゃないか、と思われましたか? その通り。基本的には同じです。
そんなことはもうやっている! という方から、 それができないから困っている! という方までいらっしゃると思います。 もしあなたが前者なら、今後、発達障害に関してあまり心配されることはないでしょう。
特定の分野が極端に苦手なまま大人になったとしても、他の分野の能力でそれを補うことは十分に可能なはずです。
でも、もしあなたが後者なら、この三つのポイントをあなた自身に実行してみてください。

①「親なのだから出来て当然」などと自分を追い込まず、できないことは出来ないと受け入れ、出来るレベルから積み上げてみる 。
②自分の得意な分野の能力を活用してみる。
③過去の失敗で自分を責め続けない…など。

そしてもう一度、お子様に対して三つのポイントを踏まえた対応を続けてみてください。仮に他の子と成長の速度に違いはあっても、確実に子どもは成長していきます。そしてある分野の成長は、他の分野の成長にも影響を及ぼします。 また、発達障害に有効性が認められている薬も存在しますし、医師と相談の上、投薬をすることも否定はしません。
しかし、仮に投薬するにしても、これら三つのポイントを蔑ろにしていては、問題解決には至らないでしょう。
なんとしても避けたいのは、成長する過程で自己肯定感を喪失してしまうことです。そのために出来ることもできないまま大人になってしまうと、社会に適応するのが困難になりかねません。
これが、二次障害と言われるもので、問題の本質と言ってもいいと思います。

行き詰ったら一呼吸

ところで、あなたはお子様に「何度言ったら分かるんだ」とか、「何回言わせる気だ」などと叱ったことがありますか? …お気づきになりましたか? そうです。 何回言っても分からない事が何回もあるということは、そもそもこちらの言っていることが伝わっていない可能性が高いということです。
別にどちらが悪いということではありませんが、伝わっていないのに叱っても改善するはずがありません。
それより、先ほどのポイントにあるように、ハードルを下げて段階を踏むようにしたり、なぜ出来なかったかを丁寧に聞いて、苦手な個所を見つけ出し、それを克服するためのサポートをしてあげた方が、遥かに成長は促されます。
例えば「約束を守る」といった重要でかつ簡単なルールを何度も破られると、つい感情的に叱りがちです。でも、「何度も」守れないときこそ、一呼吸置いてから言い方を変えるなどの工夫をしてみましょう。

最後に

発達障害に直面し、理解し納得できるようになるのは、いざとなれば他の能力で補えばよい、という考え方です。 発達障害は病気ではありませんから、現在のところ「治る」といった類のものではありません。
でも別の方法で課題が解決できるなら、生きていく上でそれ程問題ではないのではないかと思えるようになり、 「障害」ということばの意味合いが、少し変わってくる気がします。 発達障害があっても、周囲の理解や様々な工夫によって、それを乗り越え、自分の力で生きていくことは可能です。
そしてその理解や工夫は、障害があってもなくても誰にでも同じように必要なものです。

まずは、あなたのお子様を「よく見る」ことから始めてみてください。